2008/02/21

「失われた時を求めて」読破!

この小説、なんとなくかっこいい題名に惹かれて、学生の頃から「死ぬ前に一度は読んでおきたい」と思っていました。しかし、学生の頃は文庫化なんてされてないし、新刊本は高いし、古本屋でもあまり出会えないしということで、同じ作者の「楽しみと日々」の文庫本を読んで我慢していました。

昨年、この本を集英社が文庫化したことを知り、昨年の2月頃から読み始めました。約1年かけて読んだことになりますね(遅)。私の読書タイムは会社帰りの電車の中だけですので、それほど多く読める訳ではありません。しかもこの本、読んだことのある方であればご存知でしょうが、内省的記述がほとんどなので、正直、電車の中では気が散ってあまりページが進みません。

さて内容はどうか。これから読まれる方がいらっしゃるといけないので内容については書きませんが、読み応えのある正統的な文学って感じですね。内省的表現や比喩が多く、比喩の材料もフランス文学の古典的な詩や散文だったりするので訳注を読みながらでないと意味がよくわかりません(読んでもよくわかりませんが)。それに、直接的でわかりやすい人間同士の交錯があまりないので、ちょっと退屈したりします。文章も、一文がとても長くてわかりにくいし。日本語にしてもこれだけ難解な文章をフランス語から翻訳した訳者はとても偉いと思います。訳者あとがきによれば、プルーストの文章は決して難解ではないとのことですけどね。

最後の2巻では、「時」というものを本当にうまく表現していると思います。時の認識の仕方として、こういう方法もあるんだなと関心します。

私が小説に心を動かされた原体験といえば、高校生だったか浪人生だった頃に読んだ「人間失格」です。主人公が自殺未遂を起こし、警察官の取調べを受けるシーン。主人公が漏らした咳に対する警察官の反応。 「うんうん、わかるよその心理状態。人間のこういう心の動きはこういう言葉で表現するのか。」 とても感じ入ったものです。多分、「失われた時を求めて」も同じジャンルの小説と言ってもいいと思いますが、主人公が考えを述べる部分が異様に多いので、太宰よりも退屈でしょう。でも、心の動きの描写に共感できる部分も多々あります。

この1年間、書店で本を選ぶという楽しみから遠ざかっていたので、次は何を読もうかとちょっとワクワクしています。

しかし全13巻、飽きもせずよく読んだもんだ(いや、実はちょっと飽きました)。

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